美容室の差別化が必要な理由

厚生労働省が発表した令和4年度の美容室の件数は、約27万件で、毎年増加しています。美容室の数は地域によって異なり、一部の地域では200軒以上の美容室が営業しています。その中から選ばれるためには、美容室は差別化を図り、集客力を高める努力をしています。差別化は、集客や価格設定の面で重要な要素です。

例えば、ラーメン屋を考えてみましょう。大手チェーンの中華料理店では、ラーメンの種類が豊富で他のメニューも多彩です。しかし、それでも安くて美味しいとしても、そこに長い行列ができることはまずありません。一方で、〇〇ラーメンのような有名店では、昼時には行列ができ、価格も1000円を超えることもあります。なぜなら、ラーメン愛好家は、専門店の方がチェーン店よりも美味しいと期待し、高い値段でもその価値を見出し、リピートするからです。

美容室の場合も同様で、何でもやっている美容室と比べ顧客は自宅からの距離や価格、予約のしやすさ、技術などを考慮しています。価格競争が激しく、集客が難しい状況下では単価を上げることは容易ではありません。さらに大手や地域のチェーン店が広告費を投じ、集客力を高める傾向にある中で、自分の美容室が選ばれないといけません。

一方、専門店は特定の分野に特化しており、同じ地域内の競合が少ない傾向があります。そのため、希少価値が高まり、顧客は高価でも納得して利用し、満足度も高くなります。

また、専門店では独自のメニューや技術を提供しており、顧客に特別感を与えます。そのため、顧客は高い価格設定にも納得し、満足して予約を入れる傾向があります。例えば、特定の美容技術やトリートメント、または特定のスタイルに特化した美容室は、競合他社よりも独自性が高く、顧客のニーズに合ったサービスを提供することができます。その結果、顧客は価格よりも品質や専門性を重視し、専門店を選択する傾向があります。

現在の特化型美容室の現状

差別化=特化型美容室とこの記事では考えていきます。

特化型を構築しようとするサロンでは、例えば「髪質改善」「ハイトーンカラー」「韓国風」といったコンセプトがよく見られます。これらのコンセプトはポータルサイト内での集客を促進し、単価も向上させる可能性があります。ただし、重要なのは自身やスタッフが得意とする技術や知識を持っていることです。特に現在ポータルサイトで目立つコンセプトは、競合他店も多い傾向にあります。集客はできても、お客様の満足度は競合店と比較されることになります。自信を持って提供できる技術や知識があれば、相場より高い価格設定も可能で、リターンにつながるはずです。

ただし、問題は自身やスタッフが設定したコンセプトの技術や知識を十分に持っていない場合が多いことです。そのような場合、新たな技術を学習し、知識を向上させる必要が出てきます。コンセプトを設定し、ポータルサイトでアピールすることは容易ですが、未経験の技術ではリピート率が低下し、自信を持って提供できないため、施術が苦痛になる可能性があります。

例えば、「ハイトーンカラー」をコンセプトに掲げた場合、どのような髪質のお客様が訪れるかは予測できません。お客様はカラーのイメージを持って来店するため、美容師はどんな髪質でも希望通りのカラーリングを実現する技術が求められます。美容師が技術不足だと施術中に不安が生じ、お客様のイメージと異なる結果になるとクレームの原因にもなります。そのため、元々カラーリングが得意な美容師であれば、ハイトーンカラーをコンセプトにしても成功するでしょうが、トレンドだからといって急いで学び、コンセプトとして掲げてしまうことにはリスクが伴います。

美容室を差別化するための自店分析

顧客満足度の高いメニューは何か?

差別化を図る最も効果的な方法は、自身の得意な技術をコンセプトにすることです。これにより集客や売り上げの拡大が見込めるだけでなく、お客様にも自信を持って提案できます。重要なのは、やりたい技術ではなく自身が得意とする技術を選ぶことです。多くの場合、得意な技術とやりたい技術と勘違いしてしまうことがあります。得意な技術とは、どんな髪質でも一貫して満足のいく仕上がりを実現できるものです。

そのためには、自身の得意な技術を具体的にイメージすることが重要です。「得意な技術は何ですか?」と聞かれると、ほとんどの美容師が、カットやカラーといった一般的な回答を返えされますが、実際には、お客様の希望に応じて確実に満足いく仕上がりを実現できる技術こそが得意なものです。

メニューを利用している顧客の分析

私は過去に、幅広い技術を学ぶためにセミナーに参加し、トレンドを取り入れたヘアデザインを意識した技術が得意だったので、それを自身のコンセプトとしてポータルサイトで打ち出していました。しかし、実際に指名してくれる顧客層を分析すると以下のような傾向が見られました。

  • 男女比: 女性5:男性5
  • 女性顧客の年代:
    • 10代: 10%
    • 20代: 10%
    • 30代: 30%
    • 40代: 30%
    • 50代〜: 20%
  • デザインカラーやハイトーンカラーのメニュー比率: 10%以下
  • リターン率が高いメニュー: 普通のカット、白髪染め、ワンカラー
  • 失敗する確率が低いメニュー: メンズカット

この結果から、自身が求められているのはトレンドではなく、むしろ基本的な技術や安定した施術内容であることがわかりました。この時点で、得意な分野を特化させ、コンセプトを絞ることが重要であると感じました。トレンドを取り入れたヘアデザインは得意なことではなく、ただやりたいことでした。

この時に自身の強みを考慮し、ターゲット層が明確化されたら、次にコンセプトをより鮮明にしていく必要があります。例えば、「メンズ」「白髪染め」「40代女性」といったように、特定のニーズや年齢層に焦点を絞ったコンセプトを打ち出すことで、顧客の興味を引きつけ、集客に繋がる可能性があったと思います。

自身の強みや顧客のニーズを考慮しながら、よりターゲットに特化したコンセプトを打ち出していくことが、効果的な差別化戦略を構築する鍵となります。

自分の強みを把握し、ターゲットを定めたら次は独自性のあるコンセプトを考えます。

例えば、メンズの指名客が多い場合、男性顧客がなぜ指名しているかを考えます。ただし、性格や趣味が合うという技術以外の要素ではなく、美容師としての技術にフォーカスします。接客や会話も重要ですが、同じような人が来ても同じサービスが提供できるとは限りません。顧客が特に気に入っているのは技術面であり、そのメニューが顧客にとって魅力的であり、支払いに値するものでなければなりません。

客観的なデータや数字や顧客から考える

感覚的な分析だけではなく、客観的なデータや数字を確認することが重要です。顧客分析やメニュー分析を行うことで、より客観的な情報を得ることができます。さらに、リターン率も重要です。集客はできているが、リピート率が低い場合もあります。集客とリターン率の両方を考慮し、効果的なコンセプトを確率することができます。

顧客に直接聞いてみることで、自分が指名される理由や他の美容室や美容師ではなく自分を選んでいる理由を正確に把握できます。長い付き合いの顧客に自身の強みや顧客のニーズを考慮しながら、よりターゲットに特化したコンセプトを打ち出していくことが、効果的な差別化戦略を構築する鍵となります。

自分の強みを把握し、ターゲットを定めたら次は独自性のあるコンセプトを考えます。

例えば、メンズの指名客が多い場合、男性顧客がなぜ指名しているかを考えます。ただし、性格や趣味が合うという技術以外の要素ではなく、美容師としての技術にフォーカスします。接客や会話も重要ですが、同じような人が来ても同じサービスが提供できるとは限りません。顧客が特に気に入っているのは技術面であり、そのメニューが顧客にとって魅力的であり、支払いに値するものでなければなりません。

聞くと、信頼関係が築かれた後の理由が主になりがちです。そのため、1年以内に顧客になった人に聞くことで、より正確な情報を得ることができます。

また、その顧客は他の美容室にも行っているはずなので、他の美容室ではどのような経験をしたのか、自分ではどのような経験を求めているのかを聞いてみると、より適切なコンセプトを見つける手助けになります。さらに、自分を選んだきっかけも聞くことで、集客戦略に有益な情報を得ることができます。

このような情報を収集することで、自分の美容室のコンセプトをより明確にし、顧客のニーズに合ったサービスを提供することが可能になります。

ここまでが自分が得意な技術であり、顧客にも満足してもらっているメニューや技術になります。

メニューの名前やキャッチコピーを考える

コンセプトが決まったら、ターゲットに合わせたメニュー名を考え、フルコースメニューを作成していきます。メニュー名は商材の名前や美容師用語を避け、お客様が理解しやすい言葉を使うようにします。ポータルサイトで見かけるようなカラー材の名前や技術の名前は、一部の人にしか理解されません。お客様が自分に必要かどうかを判断しやすくするために、わかりやすい表現を選びます。また、ターゲットのお客様に必ず提供するべきメニューをコースとして提供します。後からオプションとして追加すると、お客様が迷ったり価格が不明確になったりする可能性があるため、お勧めしません。

最後に

上記が他の美容室との差別化を図るための特化型美容室(美容師)の作り方になります。現在の顧客は今まで通りの料金やメニューでご利用いただきながら、新規顧客を特化型美容室として集客していけば、現在の売上を落とすことなく検証していくことが可能です。専門店になることで集客や単価アップが見込まれるため、課題を抱える美容室の方はぜひチャレンジしてみてください。