美容室開業をしたい時に物件を探さないといけないのですが、初めての場合どういう物件を選んだ方がいいのかわかりません。

知識をつけてから不動産会社に内見申し込みをしないと「契約する気がない」と思われたり、不動産会社や内装屋さんを振り回して印象が良くない事になってしまいます。色々なネットの情報を見てイメージを膨らませて内見申し込みをすることで物件を見極めることができます。

前提として美容室を運営可能な物件は少ない

スーモやアットホームなど不動産仲介サイトをみてたくさんテナントが出てくると思いますが、その中でも美容室OKなテナントは少ないです。いいなと思ったテナントの不動産屋さんに問い合わせてみるとわかると思うのですが、美容室だから断られることもあります。水を使う事業なので大家さんによっては断られてしまいます。しかも美容室はたくさんありますし、たくさんの美容室が廃業しているのでこれ以上需要がないと判断され、他事業と比較したときに契約を断られることもあります。また住宅用の物件で美容室OKとご案内されても実際内見に行った時に水回りの設備が住宅用だと美容室は入れないことがあります。自力で水回りの設備を整えようとしても費用がかさんだり、不可能な物件だったりするので、そもそもそういう物件だったら契約しないことをお勧めします。

賃料(家賃)はいくらくらいがいいのか?

固定費を抑える

毎月支出が必ず出る経費(固定費)なので少ない方が経営が楽になります。固定費が大きくなれば売上も上げないと利益が減ります。

初期投資を抑える

物件取得費が安くなります。物件取得費=初月賃料+前払い家賃+敷金(保証金、家賃の2ヶ月〜12ヶ月)+礼金+保証料(家賃の1ヶ月が多い) ですので、家賃が低いと最初にかかる物件取得費も安くなります。

過去に20万円の物件を借りていた時の物件取得費は

初月賃料[20万円]+前払い家賃[20万円]+敷金(保証金家賃の10ヶ月、2ヶ月償却)[200万円]+礼金なし+保証料[20万円]=260万円初期費用でかかりました。

保証金がなんでそんなに高いの?と思われると思います。保証金というものは、もし借りている人が家賃が払えなかったり、夜逃げしていなくなったりした場合、借りている人が退去費用が払えない場合にここから払いますというお金なんです。なので契約している物件から退去する時に何もなければお金を返してもらえます。しかし償却金というものもあります。契約している物件から退去する時に保証金から差し引かれるお金です。「保証金を家賃の10ヶ月分払いましたが、2ヶ月分は返しません」というものです。

家賃が安すぎると今度は物件のクオリティに問題が出てくる可能性があります。

築年数

古ければ古いほど安くなる傾向です。築50年の物件は耐熱性や通気性、耐震がその時代に合った気温や環境で作られています。50年前に比べると平均気温は上がっていますし、エアコンの効きなどもかなり変わります。日本だと地震のリスクもあります。物件が古くなればなるほどいろいろな部分が壊れやすいです。

お客様だったり働くスタッフのことを考えると築浅の物件の方がいいですね。

立地

一般的に駅に近い立地が家賃が高いです。駅から遠くなると安くなる傾向です。駅近は集客や求人がしやすいです。逆に駅から離れると人通りが少なくなる傾向にあるので集客や求人がしづらくなります。駅近なら色々な人種がいるので狙うターゲットはかなり広がります。駅から離れると住宅地に近いところになるので、ターゲットを狭めないとうまくいかない傾向になります。ロードサイドは安く広い物件が借りられます。しかしその店舗に近い人、または車を持っている人のみの集客なので利用者が限定的になり、提供するサービスを絞り込まないといけません。

路面か空中階

→路面店は歩いている人の目に入るので家賃は高くなります。2階以上のテナントだと1階よりは安くなる傾向にあります。路面店だと看板で集客できる可能性があります。飛び込みのお客様を狙うということは単価を下げた方がご来店いただく可能性が増えます。戦略をしっかり考えればホットペッパーなどのポータルサイトを利用することなく集客できる可能性があります。いい例はQBハウスやカラー専門店です。

1階でガラス張りのお客様が見える美容室は少なくなりました。お客様のプライバシーを考えると内装が見えない作りの方が主流になっています。ネットで検索すると内装が見れるようになっているので、外観よりもネットを作り込んだ方がいいと思います。ポータルサイトに掲載して集客する方法も必要です。

空中階のテナントの場合は歩いている人に気付きにくいので1階よりは家賃は安くなります。看板を出すことも難しい場合もあるので基本的にネット戦略で集客した方がいいです。家賃は下げた方がいいので空中階を選択した方が無難だと思います。

間取り

一般的には四角形のテナントが美容室を作りやすいです。形がイビツだと家賃は安くなります。使いづらいテナントだと入居者が入りにくいためです。テナントが細長すぎたり弧を描いていたりすると、無駄なスペースが生じます。ここでビジネスできるかも、という物件はまず自分で足を運んで外装を見ます。お客様の徒歩などの動線を見て、この物件は行ける!と思ったら不動産屋さんに問い合わせて内見をしましょう。それでもこの物件で勝負したい!と思ったら、内装屋さんを同行させます。この手順を取らないと内装屋さんの時間もとってしまいますし、不動産屋さんの時間も余計に取ることになります。微妙なテナントの時はまず自分だけ行って判断しましょう。

物件選定で必要なこと

ここまで色々書かせていただきましたが、まず事業をする人が事業をやりたい場所の相場を知ることが大事です。東京だと都心の場合、坪単価1.5万でも安いと思います。23区を外れれば外れるほど坪単価が安くなります。弊社の場合吉祥寺に物件があるのですが、22万の家賃に対して14坪の広さです。

大体坪単価1.5万くらいですので許容範囲です。坪2万のテナントだと借りていません。

意識することは色々ありますが、上記のことをおさえるといい物件かいい物件じゃないか判断できると思います。

ここまでが、美容室を開業したいけど物件の探し方がわからない方にお伝えしたい内容です。

8席以下の美容室を開業するためのテナント選定方法

僕は今まで3つの美容室を開業してきました。1番最初は8席の業務委託系サロン。2つめ3つめは4席の個室の美容室。僕が伝えられる黒字経営できる物件選定の方法をお伝えします。

物件の中でも[セット面8席以下]のテナントに絞って書いていきます。

家賃はどうやって決める?

まずは家賃についての考え方をお伝えします。基本的に家賃は売上の10%以内に収めるべきです。

全体の売上=材料(5%)+家賃(10%)+給与(50%)+広告宣伝費(10%)+光熱費(2%)+その他(3%)+利益(20%)

上記が僕の考える理想的な数字になります。家賃比率が下がれば利益が増えますし、上がれば利益が減ります。

自分がやりたいサロン、どんな美容室にしたいかイメージを持ちながら物件選定するといいでしょう。

イメージしたい物件の条件を書きながら解説していきます。

①セット面×100万円、その10%が家賃をイメージする

1席なら100万円、2席なら200万円、4席なら400万円、6席なら600万円、8席なら800万円です。席が多ければ多いほどスタッフの人数を入れないといけないのでリスクが生じます。最初はスモールスタートを考えたほうが絶対にいいです。

いきなり大きなテナントを借りて開業しようとしても、過去の実績がなければ金融機関に融資してもらえないことが多いので、金融機関としても実績のない人に大きなお金を貸すことはリスクしかないです。まずは小さく始めることを考えていきましょう。

おそらく6席で600万円、8席で800万円ではかなりハードルが高いです。8席あっても5席分の売上はザラにあります。しかし8席のテナントで500万円の売上で、50万円の家賃ならいいのです。8席で400万円の売上で80万円の家賃だとかなり危ない経営だと思います。4席400万円の売上の方がイージーです。理由は雇用と集客の問題があります。なかなか即戦力の美容師スタイリストをすぐに見つけることが難しいので売上がそこまで上がらない可能性があります。また、そのスタイリストにお客様を貯めるとなると徐々に集客をしないといけません。クーポンなどでリーズナブルにすればするほど集客力は上がりますが、売上が上がりにくくなります。スタッフも疲弊してスタッフの定着率も悪くなり、悪循環な経営になりがちです。1人に対して100万円売り上げてもらうにはどうすればいいか設計する必要もあります。100万円売上を上げることが現実的に難しいようでしたら、100万円ではなく80万円を目指したりする場合もあるかもしれません。そうなった場合は家賃の基準も下げた方がいいと思います。家賃の目安10%を8%にすればいいと思います。

②テナントの賃料を見て売上を考え、作るセット面の数を逆算する

15坪前後、縦長もしくは横長のテナントなら6席(シャンプー台別場所に2台)が限度だと思います。個室を作ろうと思うと4席(目の前にシャンプー台)が限度だと思います。15坪で坪単価2万円だったとすると、家賃が30万円。家賃比率の目安が10%なので、そのテナントは300万円売上ないと割に合わないということです。ということは3席以上作ればそのテナントでは成り立ちそうですね。

10坪で坪単価3万円、30万円のテナントの場合は3席作れるか微妙なのでやめておいたほうがいいです。

上記の図は駅徒歩3分以内、20坪、坪単価1万円、20万円のテナントでセット面8席、シャンプー台3台の美容室を作りました。売上は500万円前後でしたので家賃としての考え方では悪くない数字です。

③アットホームやホームズなどのポータルサイトでこまめにチェックする

僕がよく使っていたのはアットホームというサイトですが、テナントを探すときは毎日見ていました

・賃料、坪数、坪単価…予算内かどうか確認します。長続きさせるためには安い物件の方がいいです。

・築年数…古すぎると何かしらリスクがあると考えたほうがいいです。外観はあまり気にしなくてもいいかと思います。派手すぎる物件など、お店のコンセプトに合えばいいのですが、合わない場合は候補から外したほうが無難です。

・駅徒歩…集客の面、自分が通う、またはスタッフが通うことになるので駅からのアクセスは重要です。

これを踏まえ、気になる物件が出てくるまでチェックして、出てきたらすぐ内見予約をしてテナントを見に行きます。テナントは一点物、水物なんです。いい物件はすぐに競争が起きます。

逆にずっと決まってない物件があるとすれば何かしらリスクや賃料が高いという懸念点があります。そういう物件は「家賃交渉」をしてみるのも一。値段交渉する=入居します、借りますという意味です。値段交渉してやっぱり借りるの辞めた、というのはタチが悪いと不動産仲介会社からも大家さんから思われます。不動産仲介会社は「この人本気じゃないし力になれないな」と思われます。そういうことは絶対にやめましょう。

目安としては新築に近い、駅徒歩9分以内、坪単価1.5万円の物件を目指すといい物件だなと思います。

④実際に内見に行く

不動産屋さんにアポイントを取ったら実際に見に行って見ましょう。内見しないとわからないことが多いです。実際に僕が内見に行ってダメだった物件のことを記載してみます。

・坪単価1.5万駅近、地下物件で古いテナント。入った瞬間水回りのこもった匂いがする物件でした。不動産屋さんからは「しばらく使ってないので配管から匂いが上がっているんですね、使い始めたら大丈夫になりますよ」とのことだったのですが、同席した内装屋さんから「絶対にやめた方がいい」と言われ契約を見送りました。地下でジメジメしていて壁からも水滴が滴り落ちている。木材など腐りやすくなりますし、水回りが壊れたら修理するのにもお金がかかるみたいで辞めました。実際行って中身を見ないとわからないことがたくさんありました。

・坪単価1.5万駅近、地下物件で12坪の物件。12坪だから個室が3席は作れるだろうと思い内見をしたのですが、内面図見ると入り口の階段含めて12坪で実際の使用面積は10坪無いテナントでした。これも行って見た瞬間「狭い」と思い、すぐ辞めました。2席も作れなそうなテナントで、これも実際に見てみないとわからないことも多いと思いました。

・坪単価1.5万駅近、地下物件の飲食店の居抜き。20坪ないくらいの広さでいいなと思ったのですが、不動産屋さんから事前に説明がありましたが、残地物ありで撤去は入居者負担とのことでした。なので初期費用が100万くらいかかるみたいで、飲食の居抜きなので虫なども心配、更に入り口が狭く同じビルの他のテナントも汚いお店が多かったので辞めました。

・坪単価1万円駅近、10階くらいの2LDKのテナントでした。美容室OKのテナントだったので見に行きましたが、2LDKともあって壁もあるし、入居するなら壁を壊さないといけない状態でした。更にエアコンも増設できない、水道の排水も小さく実際は美容室不向きな物件でした。内装屋さんを連れて行って判断してもらいましたが本当に行かないとわかりませんでした。

物件を探していると必ず妥協点が出てきます。駅徒歩なのか、広さなのか、値段なのか、その他条件なのか。妥協してもいい物件は「ここだ!」と思うはずです。思わなければ縁がなかったと考えた方がいいと思います。実際僕が今まで契約した物件は妥協するポイントはもちろんありますが、「ここで勝負できる!」という物件しか選んでませんし、お陰様で赤字撤退は今までありません。

物件選びは美容室を経営する上で最重要

美容室を経営していく上で、物件の立地や家賃は最重要です。外観や雰囲気だけで決めるのではなく、事業を続けていくにあたっての費用や建物の状態を加味して判断していかないといけません。

美容室の出店を考えている方は参考にしていただき、条件に合うテナントを探してみてください。